水を描くのも、哲学なのだ
「水を描く」というのは、どんなアーティストにとっても立ちはだかる高い壁のようなものだ。背景であれ、絵のアクセントであれ、否が応にも力が入ってしまう。
ミレーのオフィーリアやウォーターフォールという連作をつづける千住博、ターナーが描いたテムズ川などを比較すればどれも違うように、水の表現には正解もなければ、簡単にできる方法だってない。
水にはかたちがない。だから、いつだって置かれたまわりの環境の影響を受ける。
状態を把握する力、かたちのないものを切り取る観察眼、そして二次元の平面へと置き換える想像力。なにより水らしさを見る者に伝えなくてはならない。
だから、画家自身の個性とアート哲学がぎゅっと凝縮されて表れるのが、「水」というモチーフなのかもしれない。こんな視点で、まずは身近な水を見てみてはいかがだろう。そして、自分であったらどう描くか、想像のなかで絵筆を動かしてもらいたい。いつも目にしている水がまるではじめて目にする物体かのように映るかもしれない。そんな日常での、脳のトレーニングが楽しめるようになるのも、ART & LOGICの醍醐味である。(M.K)