画家になった、元アメリカ大統領
恐るべき転身を遂げたのは、第43代アメリカ合衆国大統領・ジョージ・W・ブッシュ。
在任中はあまり良い評価を得られず、後任のオバマ人気の影にかくれ、退任後もそこまで注目されることのなかったブッシュではあるが、最近彼の名前を耳にすることがある。それも、政治の世界ではなく、アート界で。
なんと彼は現在、ポートレート画家として個展をひらき、著名な美術評論家からレビューを受けるほどになっている。
ブッシュは大統領退任後、敬愛するチャーチル元首相のエッセイを読んで、彼がいかに絵画に魅了されたかを知り、“それなら自分も”とものは試しに絵筆を取ったのだという。
はじめこそ身の回りにいる動物など、とりとめのないモチーフを選んでいたが、作品を見た地元の芸術大学の教授から、「細部をとらえる目」を評価され、在任時代に親交のあった各国の首脳を描くに至った。
彼が描いたのは、アンゲラ・メルケル首相、トニー・ブレア元首相、プーチン大統領、小泉純一郎元首相など、世界を代表するリーダーたち。けっして上手いとは言えないものの、対象のキャラクターをよく知るブッシュにしか表現することのできない、人間味と愛に満ちたあたたかい作品ばかりである。
絵画のおもしろさ・醍醐味というのは、「必ずしも上手な絵が心を掴むわけではない」ところにある。年齢や経験を重ねるほど、引く線の一本・置く絵の具のひとつにも深みが増し、表現の幅も広げることができる。そして生き様そのものが、作品にあたらしい価値を与えるのだ。あなたもこれまでの人生を絵画として、かたちに残してみたらいかがだろう? (M.K.)