巨匠のひとこと
「芸術は爆発だ!」の名言や太陽の塔で知られている芸術家、岡本太郎。彼のエピソードを一つ紹介したい。
彼がスキーを始めたばかりの頃、若手の画家たちの何人かが山形県の蔵王高原にお供をしたそうなのだ。もちろん、お供をした若手の画家たちはスキー達者な者ばかりである。
若手の画家たちは当時の美術界のスーパースターである岡本太郎に怪我でもさせて絵が描けなくなってしまったら大変なことになってしまうのでなるべく緩やかな斜面で滑るように誘おうとしたそうなのだ。
ところが岡本太郎は「てっぺん連れてけ、てっぺん連れてけ」の一点張りで急斜面の山の頂上に行きたがってしょうがなかったそうなのだ。
とうとう根負けして若手の画家たちは渋々とゴンドラとリフトを乗り継いで岡本太朗とともに蔵王の頂上に到着したのである。
すると誰よりも早く準備を整え一気に急斜面を滑りおりて行ったのだ。
慌てた若手の画家たちは後を追って急斜面を滑りおりた途端に岡本太郎が樹氷にぶつかり雪の中にすっぽりと埋まってしまったのである。
ここで怪我でもさせたら大変なことである。
すぐさま救助に向かうと、もごもごと雪をかき分けて出てくるなり「お前らどうした!」「先生、大丈夫ですか」「大丈夫な何もどうしたんだ!」「お身体、大丈夫ですか?」
そこで岡本太郎が一言、
「大丈夫も何も俺は転んでなどないぞ!地球がオレに転んだんだ!」
若手の画家たちは呆気に取られたそうだ。
視点を変えて物事を捉える。
さすが岡本太郎である。
<T.M>