だからアートから離れられない
どうしてあなたはアートに興味があるのだろうか?「アート」という言葉を聞くと、それだけでぴくりと反応してしまう。これはもう、アートにとり憑かれている証だ。
それなら、ただ絵がうまくなれば満足できるだろうか?いや、おそらく違うだろう。
アートが生活の一部であることの醍醐味とは、アートを通して答えのない問題に向き合い、一種の知的ゲームに挑戦するところではないだろうか。
アンドレス・セラーノが発表した写真は、黄金色に輝くなかにキリスト像がたたずみ、見るものを神聖で荘厳な印象で包んだ。しかしこのタイトルは「ピス・クライスト」、実は尿がたっぷり入った容器に沈んだキリスト像を撮影したものであった。
この例ほどまで直接的ではないにしろ、ただ見た目が心地よい・美しい、そんな単純な感覚だけでは判断できない、鑑賞者の倫理観や哲学に訴えかけるテーマをもつ作品が増えてきている。
今後ますますAI(人工知能)が人間の作業を代替していくことが進めば、ひとはより、「人間らしさ」を武器として生きていくことになるだろう。アートを極める、これは人間としてこの世に生きる意味を問う繰り返しなのかもしれない。つまりアートは、これからの社会でわたしたちが直面する課題にいち早く取り組んできた学問なのである。
(M.K.)