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愛妻家アーティストのミューズたち

モデルたちとの結婚を繰り返し、嫉妬の渦のなかにいたピカソ、5人の子供に恵まれながらも家庭を捨ててタヒチへ移住したゴーギャン、生涯未婚ながらも多くのモデルと愛人関係にあり、非摘出子が数多いクリムト。

波乱万丈な人生こそがアーティストの生き様だと思い込みがち。情熱的な恋愛を繰り返し、画家たちが敬愛する女性たちはミューズとして、しばしば彼らの作品に多大な影響を与えてきた。

しかし今回は方向をぐるっと変えて、そんな激動の恋愛模様をもつ多くの画家たちのなかでは少数派といえる、愛妻家たちにスポットを当ててみたい。

 

美しい色合いで幻想的な世界を描いた、マルク・シャガール。ユダヤ系であったために時代に翻弄された彼であったが、ベラとの結婚を機に作風がおおきく変化した。今もなお評価される明るい色彩は、喜びあふれた夫婦生活からもたらされたもの。迫害を逃れるために移住したアメリカでベラを亡くした後も彼女を想い、インスピレーションの源としてテーマにし続けた。

 

変わり者の多い美術界でも奇人として知られる、サルバドール・ダリ。彼は、友人であった詩人の妻ガラと一目で恋に落ち、その後結婚。10歳年上であるガラが亡くなるまで50年もの間連れ添い、彼女はダリの一番の理解者であり続けた。

独特の口髭に大きく見開いた目がトレードマーク。奇人変人エピソードに事欠かず、奇行を繰り返して有名になったダリではあるが、ごく親しい者の前ではきめ細かな心遣いを見せる繊細な人物であったという。

そんなパブリックイメージと実像の狭間で苦しむダリを傍で支え続けたガラ。彼女を亡くしたダリの虚無感は凄まじいもので、翌年には、「人生の舵を失った」という言葉を残して、以来制作活動をぱたりと止めてしまった。

 

作品の裏に隠された、アーティストたちの個人史。その足跡をたどってみながらアートを鑑賞すると、これまで見えなかったものが瞼の裏に広がってくるにちがいない。  (M.K.)

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